”コンシューマー・トレンド 2022” レポートから読み解く新しい消費者像・新しい社会の形(2)
第2回:米国での新しい消費者像と社会システム
第1回目は、パンデミック発生後の米国社会のマクロ状況をお伝えしました。今回は、米国で姿をみせつつある新しい消費者像と社会システムについてご紹介したいと思います。
新しい消費者像を語る上で欠かせないのが、現在の米国人口の40%を占めるに至ったZ世代(9 ~ 24歳)です。パンデミック後も米国での消費動向は堅調で、その中でもオンラインショッピングが消費を牽引したことは前回で触れた通りです。オンラインでの消費活動は今後も増加するとみられ、生まれながらデジタル環境で育ったZ世代は、デジタルネイティブならではの思考や生活パターンをもっています。以下、Z世代とそのさきがけのミレニアル世代の特徴を列記します。
・Z世代はオフライン(リアル)よりオンラインの方が落ち着く(自分らしいと感じる)と答えた、初の世代である
このグラフにあるように、ミレ二アル世代でその数が横並びになりましたが、Z世代で初めてその数が逆転しました。オンラインでのコミュニケーションに違和感を感じず比較的自由に自己表現できる世代と言えます。ティックトックやユーチューブなどで気軽に情報発信する姿はご存知のとおりです。
・ミレニアル世代同様、ゲームがより身近な世代である
オンラインゲームは、より鮮明な画像でより早い処理速度が求められるため、先端技術が導入されるケースが多く、そこから一般社会へその技術が広がっていく、というパターンがあります。スマートフォンの次の大きなプラットフォームと言われているメタバースは、オンラインゲームで磨かれた技術が多用されることが予想され、ゲーマーであるミレニアル世代・Z世代はこのメタバースプラットフォームもすんなり受け入れ使いこなしていくでしょう。ゲーム業界の存在価値の大きさは、ここ最近マイクロソフトやソニーが大手ゲーム企業を巨額で買収したことでもわかるかと思います。ゲームは、単なる若者の娯楽ではなく、未来のデジタル社会のインフラの基礎技術が凝縮されたもの、その場固めといえる市場であり、企業にとっても戦略的事業の位置づけなのです。
・ミレニアル世代・Z世代は、ジェンダーに対して柔軟な視点をもつ世代である
ジェンダーの境界線が曖昧になった状態を、ノンバイナリー(Non binary)と言います。LGBT(Lesbian Gay Bisexual Transgender) グループ以外でも、自己紹介するときにこれまでのようなはっきりとした男性性・女性性を示す単語を使わない若い世代が増えています。そういった傾向はファッション業界にも反映されており、ユニセックスのブランドなどが立ち上がってきてます。
・ミレニアル世代・Z世代は、サステナビリティに対する意識が他の世代より高い世代である
このグラフが示すとおり、ミレニアル世代・Z世代は他の世代と比べて、環境対策における新しい試みを実践しており、消費一直線に走った一昔前のバブル世代とは一線を画す傾向と言えます。
そういったZ世代(+ミレニアル世代)の台頭から、米国の消費者はブランド(商品あるいは企業)に対しても新しい視点を持つようになってきています。
64%の米国消費者は、ブランドは利潤追求以上の存在意義を持つべきだと考える
62%の米国消費者は、ブランドは環境によい影響を与える責任があると考える
58%の米国消費者は、ブランドは利潤追求のプライオリティが高いことを理解している
54%の米国消費者は、ブランドは人々の生活はよりよくなるよう責任があると考える
つまり、今の米国消費者は企業に対して、利潤追求の重要性と同時に、社会や環境に対する責任がある、という2つの側面を理解していると言えます。企業側もそのトレンドを認識しており、サステナビリティなどを企業活動や商品開発に反映することがデフォルトになってきています。
面白いことに、そういった傾向がオンラインストアで顕著に現れてきており、下のグラフにある通り、実店舗と比べてオンラインストアのマーケットで、零細企業がそのシェアを格段に伸ばしています。それから言えるのは、サステナビリティなどに対する対応やしっかりした企業哲学を打ち出しているところであれば、中小企業でも大企業と伍して事業展開できる時代になっていていると言えます。
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Z世代の特徴と、米国消費社会の変化をみてきました。彼らのデジタルネイティブである強み、消費そのものを見直す視線などが、社会にじわじわと、しかし確実に影響を及ぼしているのがわかるかと思います。